@article{oai:kansai-u.repo.nii.ac.jp:00022391, author = {スタベンハーゲン, ロドルフォ and 角田, 猛之 and Tsunoda, Takeshi}, journal = {ノモス = Nomos}, month = {Dec}, note = {この報告書は2004年の人権委員会決議第62号(Commission Human Rights resolution 2004/62)にしたがって提出されたもので、2004年5月21日から6月4日にかけて先住民(indigenous people)の人権と基本的自由に関する特別報告者が、カナダ政府の招聘にもとづいてカナダを公式訪問した際の報告である。滞在中に特別報告者は連邦、州、準州(territory)政府や先住民族(aboriginalpeoples)の組織の代表、研究者、および、ノバスコシア、ケベック、マニトバ、オンタリオ各州とヌナブト準州の先住民コミュニティのメンバーなどと面会した。特別報告者は2003年5月にいくつかのファースト・ネーション(First Nations : インディアン(Indians))のコミュニティを訪問した。そして、これらの訪問を通じて得た情報にもとづいてカナダの先住民族の人権状況に関する本報告書を提出する。ファースト・ネーションやメティス(Métis)、イヌイット(Inuit)などをふくむ先住民族は、カナダの3000万人の人口の4.4%をしめている。1982年のカナダ憲法は、裁判所によって後に再確認された先住民族の固有の権利(Aboriginal rights)と条約上の権利(treaty rights)を認めている。近年いくつかの先住民の部族(Aboriginal nations)が、土地請求権(land claims)と自治に関するあらたな合意をめぐって連邦および州政府と協議を行ってきた。"Gathering Strength" として知られている1988年のあらたな先住民族政策において、連邦政府はカナダと先住民族との関係をより強固なものにすることを確約した。先住民がその他のカナダ人とカナダの繁栄を等しく分かち合うことを実現するために、カナダが尽力していることに特別報告者は大いに勇気づけられている。そしてこの目標達成にむけて連邦および州政府はきわめて多くのプログラムやプロジェクト、財政支援を行い、また教育や雇用、そして基本的な社会事業へのアクセスにおいて、現存する先住民とそれ以外の人びとのあいだの容認し得ないギャップを縮めるためにさまざまなことを試みている。幸福や生活の質、そして開発などにかかわる経済的、社会的、そして人間としての指標は、先住民ではないカナダ人と比較してきわめて低い。貧困、幼児死亡率、失業、疾病率、自殺、刑事施設への収容、児童福祉施設での保護、女性の虐待被害、児童買春などすべてにおいて、カナダ社会のいかなる人びとよりも先住民が占める割合が高い。先住民の社会では教育、衛生基準、住宅事情、家庭の収入、収入を得る機会や社会事業へのアクセスなどにおいては、逆にその他の人びとよりも劣悪である。そして、カナダはそのようなギャップを克服しようとしてきていることはまちがいない。植民地初期以来、カナダの先住民族は彼らの土地や天然資源、文化などを徐々に剥奪され、その結果、貧困と欠乏、政府への依存へと彼らを導いた。それに対して、彼らの権利を守り、土地や天然資源を取りもどし、またさまざまな機会の均等や自己決定権の獲得にむけた、断固とした、時には武力をもともなう社会運動が広まっていった。先住民族は土地や天然資源に対する権利、彼らの固有の文化的アイデンティティとライフスタイル、さらには独自の社会組織を尊重することなどを要求している。カナダと先住民族のあいだでの現行の土地請求権合意(land claims agreements)は、社会の安定と将来への見通しを彼らがえることを目的とし、また特定の一括賠償(compensation packages)と引きかえに先住民族の固有の権利を引き渡すこと―それはさまざまな法的議論や争いをひき起こしている―をふくんでいる。林業や狩猟、漁労などの土地をベースとした伝統的な生存活動の自由の保証を獲得することは、人権享受のための先住民族の主たる目的である。そしてそのことは、いまなおしばしば彼らが被っている差別やレイシズムをなくすことによってはじめて実現される。将来有望な開発計画を通じて、先住民がビッグビジネスを企画したケースもある。雇用や所得水準を高めるためにカナダのすべての先住民族コミュニティにそのようなチャンスを提供すべく、さらに多くのことがなされねばならない。特別報告者は本報告書の最後の部分で、上で言及したさまざまなギャップを縮めることで先住民を支援し、これまでに先住民族が獲得してきた成果を強化することを意図したさまざまな勧告を行っている。そして、特別報告者はとりわけつぎのことがらを勧告している。すなわち、先住民族に関する王立委員会(Royal Commission on Aboriginal Peoples)の諸提案にそって、先住民族の権利に関する新たな法律が連邦及び州議会によって制定されること;独立国における原住民及び種族民に関する条約第169号(Convention No.169 of the International Labour Organization concerning Indigenous and Tribal Peoples in Independent Countries:以下、ILO169号条約と略記)を先住民族との協議のうえでただちに批准すること;つぎのことがらを、カナダ政府と先住民族のあいだの合意を表明する条文と精神において確立すること。すなわち、いかなる合意によっても、先住民族の固有の憲法上の権利は不可侵で譲渡もしくは放棄され得ないこと;あらたな自治合意の内容に関して評価がなされること;政府は健康管理、住宅、教育、福祉・社会事業の各分野における先住民族と非先住民族のカナダ人のあいだの人間開発(human development)に関するギャップを縮めるための施策を集中して行うこと;先住民族のあいだで発症率が高い糖尿病や結核、HIV/AIDS の問題に取りくむこと;先住民族の自殺問題を社会問題として優先的に取りくむこと;一定のカテゴリーに分類されているファースト・ネーションの女性を差別的に処遇している現行法の規定の削除に政府が優先的に取り組むこと;人権法67条を削除すること*;カナダ人権委員会はファースト・ネーションの人権の尊重に取りくむよう命ぜられるべきこと;刑事収監における先住民族の男女、児童の高い収監率を引き下げるためのあらゆる努力をなすべきこと、である。カナダ人権法67条:"67 Nothing in this Act affects any provision of the Indian Act or any provision made under or pursuant to that Act." ただし、すでに2008年に削除されている。, 原著 : ロドルフォ・スタベンハーゲン(Rodolfo Stavenhagen) 訳 : 角田 猛之}, pages = {89--118}, title = {[翻訳] 「先住民族の人権と基本的自由に関する国連特別報告者報告 : カナダの先住民族の状況」(E/CN.4/2005/88/Add.3)}, volume = {49}, year = {2021} }